電験三種の理論って鬼門です。本試験では1限目からあるので、誰しも「電験三種って理論から勉強したほうがいいんだろうな」と思って、理論から勉強を始めがちです。しかし、実は理論は最初に勉強するにしては難易度が結構高いです。
決して“電験三種の導入科目として、初学者に電気理論を易しく解説しますよ”という勉強内容にはなっていない。厳しさをビシバシ感じることができる、舐めれてはかかれない科目になっています。
結構自分は効率的でストレスフリーな勉強方法で勉強しないとすぐに嫌になってしまうので、かなり効果的で効率的な勉強をしてきたのではないかと思います。
その甲斐あってか、本試験では理論は1発合格で自己採点85点でした。この記事では私の勉強方法と、お勧め参考書・問題集を紹介します。
理論の難易度
理論は難しいといいましたが、何が難しいのか。その名の如く、理論は電気理論を勉強します。電気みたいな目に見えないものに関する理論もまた抽象的でよくわからないものになりがちです。
普通に参考書を読んでいてもイメージしにくい。これが難易度を高めています。
例えば、適当に理論の教科書を開いて、目次の章や項目のタイトルを見てみると
・電気力線とガウスの定理
・電界の強さと電位
・コンデンサの静電エネルギー
・コイルの自己インダクタンス
・重ね合わせの理
・正弦波交流の位相角
・RLCの直列回路と並列回路
・トランジスタ増幅回路
・波形増幅回路
・論理回路
・倍率器と分流器
みたいになっています。
もう専門用語がわけわかめですよね。これらを本当にスッキリ理解しようと思うなら、電験三種用の用語集を側に置いて勉強を進めると良いと思います。
まずはぼんやりとでもいいので、専門用語のニュアンスをつかむことが理論の勉強の第一歩です。そういう用語の持つ意味を確認しながら進める手間が必要となるというのも理論の難易度を高めています。
ちなみに、理論で本試験85点取った私でさえ、いまだに上の例の中の
電位/コンデンサ/インダクタンス/位相角/RLC/トランジスタ/波形増幅回路
辺りの用語は人に正しく説明できるほどは理解できていません。
逆に言うと、電験三種の試験というのは合格者でさえ学問的にしっかり理解していない人がいる。それでも試験用としての知識を持ち、解答パターン慣れしていれば合格することができると言えると思います。
大事なのは、暗記と理解のバランスです。暗記偏重でも応用問題に対応できないし、理解偏重になると電気の理論を隅から隅まで理解することにこだわりを持つことになります。
合格者の中でも電気の理論を全て理解している人は稀です。理解しても良いのですが、その為に何冊もの専門書を読破したりするのは非効率です。
試験問題を解く為に、解答解説を見て意味が分かるほどに理解できていれば十分だと思います。
私たちは、車をを使って便利な生活を過ごすことができますが、車の利用の為にエンジニアレベルまで車の構造を隅から隅まで理解している必要はないのと同じです。
ちなみに私が何度も何度も参照した用語集はこちら。電験三種の受験をとおしての私の戦友です。
理論の合格率
2012年度 | 理論 | 18.4% |
2013年度 | 理論 | 14.3% |
2014年度 | 理論 | 17.4% |
2015年度 | 理論 | 18.1% |
2016年度 | 理論 | 18.5% |
ここ5年の合格率は概ね15%~20%となっているようです。合格率が10パーセント台っていうのはまぁ難しめの試験です。
だけど、穴を作らずきちんと対策したら受からないレベルの試験ではありません。
旧司法試験の合格率は2~3%だったらしいので、そんなレッド―オシャンに比べればまだ易しい方です。
理論の合格ライン
電験三種試験はどの科目合格ライン(得点ボーダー)は公表としては60%(60点)です。公表としてはそうですが、実際には得点調整が行われているようですね。実際自分が合格したときも、自己採点が58とかだった人も大量に受かっていました。
法的に電気主任技術者しかできない業務がある為、毎年一定数合格させるために得点調整をしてをしているのだと推察します。
ここで大事なことは、合格ラインが実態として1~2問分緩くなっているとしても、“苦手分野を作らないんだ”という気持ちは緩めないことです。
イメージとしてはどんな年でも80点を取れるくらいの実力になることを目標としてください。
おススメ過去問題集
どんな試験でもまずは過去問分析から入るのが王道です。おすすめ過去問はこれ
左に問題、右に解答が書かれており、何度も解くのに適したレイアウトとなっています。
理論だけを受験する場合の過去問題集はこれがいいと思います。
15年分掲載されていますので、出題傾向や出題レベルなどを十分に分析できます。
私の過去問分析
・公式を知っていれば解けるいわゆる“公式問題”も結構ある
・ほぼ毎年出る頻出テーマや頻出パターンは3~4くらいある。まずはそこを抑えるべし
・文章問題は全て正答しようと思ったら膨大な量の過去問分析と参考書量が必要となって効率が悪そう。文章問題は8割正答を目指す。
・あとは計算問題で8割正答を目指すイメージ。
攻略方針
基本的には苦手分野を作らない
電験の試験はどれだけ簡単な問題をきちんと解答して、点数を合格ラインまで積み上げていけるかという勝負だと思っています。
数年に1度くらいの頻度で全く手が出ないレベルの非常に難しいB問題が出るようですし、A問題でも解説を見てもわからないレベルの問題が出ることがあります。
そういうところは本試験で捨てるしかないのですが、そこを捨てると他の問題をしっかり取らないと落ちる可能性が高まります。
しっかり取らなければならない他の分野の問題レベルは易問だったのに、その分野に対して苦手意識を感じていた為に勉強を途中で放棄しており、その易問も捨てざるを得なかったみたいな最悪な結果は絶対に避けねばなりません。
理解重視、最初から暗記に逃げない
先ほども書いた様に、暗記に偏重しても応用が利かなくなるし、理解に偏重しても勉強に時間がかかりすぎてしまい、得点力がつきません。
暗記と理解のバランスが重要だと思うのですが、まずは理解することを意識してください。理解できるに越したことはないのです。勉強を進めるうえで、つまづいたら
→他の参考書や用語集で調べてみる
→ネットで調べてみる
→会社や学校で聞ける人に聞いてみる
というところまでやってみて、それでもわからなければ最低限の公式と解答パターンを身に付けて、それ以上は深入りしなくて良いと思います。
次のテーマの勉強に進んじゃって下さい。先を読み進めることで、つまづいた部分が理解できることは多々あります。
おススメ参考書
フルカラーで力が付く電験第3種 理論A to Z
初学者向けの本です。勉強を始めてすぐの頃は、まずは初学者向けにやさしく書かれた参考書を通読するのが王道の勉強法です。大学受験で例えると「○○の実況中継」の様な本ですね。これを最低2周は読みます。3周目は記憶すべき重要語句、公式、要点、表等を書き出しながら読むと良いと思います。
それが終わったら、より詳しく書かれたこちらを読みます。
電験第3種ニューこれだけシリーズ〈1〉これだけ理論
これだけというより、こんなにという本です。初学者向けの「フルカラーで力が付く電験第3種 理論A to Z」と著者が同じなのが、面白いですね。参考書を作るのが上手な人が作ると、何冊作っても名著になるようです。
おススメ問題集
まずはこちらがおススメ。
電験三種やエネルギー管理士関連で名著を連発している不動弘幸さんという方が著した問題集です。A問題対策にお勧め。この本を9割解けるくらいにマスターしたら、
へと進んで、応用段階の問題演習をするか、15年分の過去問(最低10年分)を解き始めるかして本試験レベルの対策します。
勉強のコツ
まとめノートを作る
私はこのサイトの中で何度も言っていることなのですが、理解しにくい事項、常に忘れず頭に入れておくべき重要語句や公式等については、復習しやすいシステムを作ることが大事です。それがまとめノート作りです。
こういうと、「テキストに書いていることを何で自分で手書きするんだ。時間の無駄だし、面倒くさいよ。俺はやらない。」という意見を一定数聞きます。
私の会社の同僚もそうでした。そういう人が、一発で受かっているかというとそうでもなく、4年経っても受かっていないことを鑑みると、4年も勉強するほうが非効率ではないかと思ってしまいます。
まとめノートと言っても、教科書や参考書と同じレベルまで書き込む必要はありません。自分がページをめくったときに記憶のメンテナンスができるようにキーワードや公式、図や表を中心に簡易的に作ればそれで充分です。自分だけの受験虎の巻が作れます。
・B5ではなくA4サイズの大きなルーズリーフを使う:一目で見える情報が多い様に
・1テーマで1面又は見開きを使って2面までにまとめる:一目で関係する情報全てを見れる様に
・情報を盛り込み過ぎない:参考書と同じレベルまで情報を盛り込もうとすると時間がかかるし、それだったら参考書を読めばよいということになる
・図や、表、グラフを多用する:記憶しやすい様に、また復習の速度が上がる様に
・図や表はルーズリーフの中央部分に貼り付けて周囲に余白を設ける:追加情報を書き込みやすくする為
・言葉を書き込み過ぎずキーワードで書き込む:記憶しやすい様に、また復習の速度が上がる様に
・理解を助ける解説も簡潔に書き込む:記憶しやすい様に、また復習の速度が上がる様に
<まとめノートサンプル>
数学の公式なんかも復習時に自然に目に入るように綴じ込んでいました。
ときには、こんな片ページが真っ白な見開きもあります。
このスターデルタ結線のところも、後々まとめるつもりで図だけは先に貼りましたが、結局そのままこれ以上情報量が増えることなく本試験日を迎えました。
でもこれでいいのだ。受かったから。
このページも後で情報を追加しようと思って図を先に貼りましたが、結局それ以上情報は追加されませんでした。
特に重要な公式を忘れない工夫をする
そして併せてお勧めしたいのが暗記カード作りです。これは覚えたつもりを無くし、通勤通学時間、始業前や休み時間等の細切れ時間で覚え直しをするときに抜群に役立ちます。
暗記カード作りのルール・一つのカード内には一つの式を書く
・表は式のタイトル、裏は式を書く
・裏の式については黒で書き、理解を助けるための補助的な書き込みは青で行う
・表を見て想起するのは裏の黒部分(式の部分)のみ
・裏に情報を書き込み過ぎない
参考書や問題集の目次を貼り付けるとクイック復習ができる
参考書や問題集の表紙に目次の縮小コピーを貼り付けると、ふとした時に目に入った目次の項目を見ながら「ここって結構あいまいにしていた分野だな」とか「ここって3日前に勉強したから今日くらいにもう一回復習しておくか」とか思えるので細目に少しずつ復習することができます。
具体的には、こんな感じの表紙を
こんな感じに改造してしまいます。
この目次貼り付け法は、このサイトの他のページに載せたところ、電験三種を勉強している方に好評の様で、「半信半疑で目次を表紙に貼り付けてみましたが、大変役に立っています。目から鱗の勉強法です。ありがとうございます。」という声が多かった勉強法です。
章ごとのコメント
電磁気
目に見えない電気と磁界の関係なので、勉強しても抽象的でイメージしにくく、電験三種初学者はいきなりここで「俺には電験三種は無理だ」と諦めてしまう人も多いのではないでしょうか。
ある参考書では何度読んでもピンとこなかったけど、他の参考書で別の説明を読んだらよくわかるようになることはあります。複数の参考書の解説を参照しつつ、理解を助ける図や表をよく見ながら攻略して欲しいと思います。
電気回路
電気回路の計算は中学や高校で習ったオームの法則とか、直列回路とか並列回路の計算の応用です。この辺はすんなり入ることができるのではないでしょうか。
大変なのは、正弦波とか交流とか位相とかの分野だと思います。この辺はいろんな参考書やネットの解説などを見て図や表を頼りにできるだけ理解をしつつ、理解できないところは無理せず、公式と解答パターンの暗記で乗り切るのが良いと思います。
特にRLC直列回路とかRLC並列回路とかになると、私の場合は理解できませんでした。
そこで、チェスや将棋と同じように“要素としては〇と〇と〇が出てきて、それらの活用ルールは〇〇〇になっている”という様に、数字や記号のルール有り当てはめパズルだと捉えて、割り切ってひたすらルールと解答パターンの暗記に勤めました。
電子回路
この辺の電子回路については、ビルの電気主任技術者に選任される上ではまず使わない情報です。今現在で実務経験は5年ありますが、今テキストを読み返してもよくわからない内容が多いです。
(太陽光発電の工事の施工管理補助をしたときに、この辺の専門用語は少しだけ目にしました。)
ですから、勉強していくうちにこれは実務でどんな時に使うのだろうと思うかもしれませんが、実務で使うところだけを勉強するわけではないと割り切って、電子回路ってこういう構造になっているんだなぁという納得して勉強を進めるのがいいと思います。
電気電子計測
理論の中でもイメージしやすく実務で使う場面もなんとなくわかる分野です。電圧計はこういう構造で電流計はこういう構造で誤差の補正にもいろいろパターンがあるんだなと割と勉強時間に対して成績が比例しやすい分野だと思います。
受験計画
年明けの1月から勉強をスタートさせます。8月上旬には仕上げるイメージで余裕を持って攻略します。
1月
・過去問分析
・フルカラーで力が付く電験第3種 理論A to Zを2周読み
2月
・フルカラーで力が付く電験第3種 理論A to Zの3周目読み。まとめノートを作りながら。
・電験三種突破演習を解き始める。
3月
・電験三種突破演習を全問題最低1回は解いて、解説まで読んだ状態にする。
・これだけ電験三種理論1周目読む。
4月
・これだけ電験三種理論2周目を読む。まとめノートに書いていないことが出たらまとめノートに補足していく。
5月
・電験三種突破演習2回目を解き始める。全問題の9割5分くらいは解ける様なレベルに仕上げる。
・絵とき解説 電験三種演習問題集 理論を全問題最低1回は解いて、解説まで読んだ状態にする。
6月
・絵とき解説 電験三種演習問題集 理論2回目を解き始める。全問題の9割5分くらいは解ける様なレベルに仕上げる。
7月
・過去問10年分を解き始める。このとき、初見で解けた問題には鉛筆で大きくバツ印をつけて、本試験まで解かない。
・過去問10年分はどの年を解き直しても2問間違いくらいのレベルに仕上げる。
8月
・苦手分野のまとめノートを作って、苦手ではなく得点源にする。
・自分に足りないところを考えて克服する。
9月
・本試験日に最大瞬間風速を吹かせるように10日ほど前から、10日で終わるレベルの総復習を行う。
最後に
理論が一発で攻略できると電験三種の合格に向けて弾みが付きます。後は攻略しやすい電力をやっつけて、法規も淡々とこなして、一番手ごわい機械に向けて本腰入れて取り組むだけです。
とっつきにくい理論ですが、私の工夫を参考し、自分に合ったオリジナルの工夫で簡単に攻略しちゃって下さい。
こちらの記事も勉強の一助になると思います。
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