B工事(乙工事)で辛酸を舐めた話

ビルメンテナンス業務

以前の記事
実例をふまえた、よくわかるA工事・甲工事、B工事・乙工事、C工事・丙工事
で建築物で発生する修繕工事や内装工事等の工事種類に関しては一度ご紹介しました。その記事の中ではA工事・甲工事、B工事・乙工事、C工事・丙工事の分類についての整理をしましたが、今回はちょっと踏み込んで、具体的な事案を解説したいと思います。

結論をいうと、B工事に関する費用がテナントと全く折り合いがつかなくて難航した

ビルメンテナンス会社としてB工事を請負う立場で、退店するテナントそしてビルオーナーの担当と協議を進めましたが、これから話す県では、まぁ難航しました。無茶苦茶揉めました。

私は退店テナントに関する10件くらいの内装工事経験はありますが、その中で一番揉めた案件でした。当時は揉めている渦中にありましたので、自分を客観的に見ることができていませんでしたが、今思い返すとがんじがらめになりそうな紐をほどくタイミングはいくつかありました。

この件でメチャメチャ板挟みな目にあって辛酸を舐めましたが、辛い経験もまた自分の糧と思えるほど時が経ちましたので、ちょっと振り返りつつ事例をご紹介しようと思います。

経緯

あるオフィスビルでテナントが退店することになりました。オフィスビルですが、物販のテナントが1階に入っていまして、売り上げが悪いので退店してもらうことになったわけです。ビルオーナー会社の物件担当者から、かくかくしかじかでこのテナントが退店するから原状回復工事の見積を出して欲しいと依頼されました。まぁ、そこまでは普通です。自分もビルメンテナンス会社の物件担当として、そのビルの内装工事を任せきっている内装工事業者に原状回復工事の見積を依頼して、一週間ほどで見積を受領しました。

原状回復工事なので、退店するテナントが費用負担をして、オーナー資産である該当区画を施工するB工事(乙工事)ですね。この記事で説明をした教科書的な内容のB工事(乙工事)です。
実例をふまえた、よくわかるA工事・甲工事、B工事・乙工事、C工事・丙工事

ここで、ビルメン会社としての見積書をオーナーの担当に提出して、その見積書をオーナー会社はテナント会社へ渡しました。ここからが問題です。テナント会社は大きな会社ではなかったので、その会社の社長が退店交渉の担当として見積査定をしてきました。その結果は、「この金額じゃ話にならん」ということでした。ガビーン。

ほとんどの会社では退店の際の原状回復工事の受領を処理するのは総務部とかその辺りの部署のかたです。提示された原状回復工事の見積の値ごろ感や適正価格といった目をあまり持っていませんし、減額交渉をして退店費用を浮かせても自分の勤務成績にならないので、減額しようという動機があまり無い場合が多いです。

しかし、退店テナントの社長が出てくれば話は別です。見積もりの値ごろ感や適正価格の目こそないものの、減額すればするほど経営成績が良くなるので、減額交渉にかなりの動機があります。それでも、減額を伝えてくる場合もあまりなく、あったとしても一度減額すればほぼ終わりです。

されど、この場合の相手社長はしたたかでした。「半分になればいいけどね。」とふっかけてきました。わかりますか、この言葉。見積の適正価格を考慮しての減額ではなく、はなっから支出してもいい金額ありきの減額交渉です。交渉の教科書にありそうな、「まず、無理そうな条件を相手にふっかけて、そこから交渉を始めてそのラインから少しずつ少しずつ譲歩することで、自分に有利な決着をつかみとれ」という手段をとってきました。

原状回復工事って、300万円とか400万円とか数百万円レベルの金額になることがほとんどです。仮にこちらの最初の提示金額が400万円だったとしたら200万円でやってくれというオーダーです。できないですよね。ビルメンテナンス会社が、内装工事会社から受領している見積だってこの金額にはなりません。おそらく、落としどころは300万円あたりを狙っているんだろうなとは思いますが、このキックオフは相当先が思いやられる始まり方でした。

そこからどうしたか

そこからは、オーナー会社の担当、ビルメンテナンス会社の担当の私、内装工事業者で三者面談を行いました。
オーナー:相手の要求をまるまんま飲まないにしろ、何とか金額を下げれないか
私:そうはいいましても、会社指定の単価で見積もりを作っているので、値下げには担当役員の決裁が要ります。また、下請けの内装工事会社が値下げをしてくれないと下げようにも下げれませんよ。
内装:うちも目いっぱいの金額です。いつもビルメンテナンス会社さんに出している金額です。うちも最終決裁者の社長に聞いてみます。
みたいなやり取りを何度もして、値下げをした金額をテナント会社の社長に持っていきました。

しかし、いつも返事は“No Go”、金額が合わないという回答でした。その度にまた三者面談が行われました。
私、内装工事会社:これ以上は下げれません。元々てなんとさんからは原状回復工事に充てるための敷金を受領しているのでしょう。その金額は今回の見積金額より多いということなのですが、貸主の立場でその敷金から充てて原状回復工事を実施できないのですか?
オーナー:テナントの了承を受領していない工事は実施できない。苦しいだろうが、もう少し値下げしてくれ。

ね、辛い交渉でしょう。儲けの出ない工事で、さらに値下げを言われている。内装工事業者からは、「うち以外の業者でやっていただけませんか」みたいな話が出ましたが、そのビルの竣工当初から入ってもらっている業者であり、そのビルの内装工事はその会社のやり方でやってもらっており、内装仕様の統一性の問題があるし、電気系統も知り尽くしているので工事中の停電なんかのミスも起こりにくい、だからオーナーはその会社にやって欲しいという意向を持っているけど値段はさらに下げて欲しいという無茶ぶり。

私も社内の役員から怒られました。「儲けの出ない商売をするな」と。

そうこうしているうちに別の問題が発生した

退店交渉が長引いているときに別の問題が発生しました。オーナー会社のリーシング担当が次に入るテナントを見つけてきたのですw。まだ、出ていく交渉が終わっていないっちゅうねんw!しかもそのテナントは、人気の出だしたテナントであり、その地域初出店であり、向こうの希望する入居日があるので、希望日に入れなければ別のビルを探したいらしいのです。つまり急いで今のテナントを退店させろというオーダーがでました。もう滅茶苦茶w。

で、結局どうなったの?

最終的には、私たちビルメン会社と内装工事会社が泣きました。最初に提示した金額より150万くらい下げた金額で了承をもらい、突貫工事で原状回復工事を進めました。そして、その後の次のテナントの為の内装工事も突貫工事で行いました。もう心身共にへとへとになりましたね。

私も社内で大分怒られて、内装工事会社さんともちょっと仲がこじれました。

A工事・C工事は比較的に進めやすく、B工事が結構揉めやすい

今回の例で少し伝わったかなと思いますが、オーナー資産をテナント費用で施工するB工事が結構揉めやすいです。まぁ、ほとんど揉めませんけど、そういう可能性はA工事・C工事よりは秘めているということです。

一方でA工事はオーナー資産、オーナー費用で施工するものなのでオーナーで完結している為に揉めにくく、揉めると言ってもオーナーからの少しの減額相談くらいです。オーナー担当が納得できる金額を提示できれば終わりです。

C工事もテナント資産、テナント費用で施工されるので、あまり揉めません。テナント担当が納得できる金額を提示できれば終わりです。

この記事が、A工事・B工事・C工事について、具体的に知りたいという人のお役に立てたならば幸いです。私が舐めた辛酸も無駄ではなかったことになりますw

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