エネルギー管理士として省エネに取り組んだが頓挫した話

エネルギー管理士(エネ管)

エネルギー管理士を取得した後に、テナントが130店舗ほどある大きなショッピングモールに配属になりました。

配属後まもなく常駐のエネルギー管理員に選任されました。製造業、鉱業、電気供給業、ガス供給業、熱供給業の5業種ではなかったので、必ずしもエネルギー管理士が常駐しなければならないというわけではなかったのですが、エネルギー管理士が勤務者の中にいるのであれば、彼にエネルギー管理員になってもらうのが良いだろうという施設運営会社の判断で、選任されました。

エネルギー管理士の免状を取得した後であり、何か省エネの実績を残したいという気持ちが凄く強かったので、施設内をくまなく巡回し、省エネできる余地を探しました。

意識して見て回ったのは、照明の種類、照明の点灯スケジュール、空調の発停スケジュール、外気取り入れの余地、熱がこもる場所の想定、正圧・負圧の圧力が強い箇所、CO2・熱の排気回数・スケジュール等でした。

目を皿のようにして、一週間ほど見て回ったので、結構疲れたのですが、何を一番最初に実施しようかと思い悩んだ結果、まずは照明のLED化に取り組むことにしました。

水銀灯のLED化を最初に進めようとした理由

瞬時電圧低下で一斉消灯する水銀灯が嫌いだった

水銀灯は施設の付近に落雷があったときに発生する瞬時電圧低下(通称:瞬低)の影響をもろに受け、一斉に消灯してしまいます。一回消灯してしまったら、一端スイッチを切り20分ほど待って水銀灯が冷えるのを待ってからスイッチを入れなければ点灯しません。

落雷が発生するたびに、中央監視室にテナントからの電話が殺到する為、毎回水銀灯の仕組みについて説明をするのが本当に大変でした。

ビルメンの管球交換手間を減らしたかった

施設の老朽化が激しく、年々営繕作業や一次対応の量が増えていた為、管球交換の手間を少しでも減らしかたかったという事情がありました。

やはりLED化は省エネ効果が高い

着手しようとしていたのは、300灯ほどの水銀灯のLED化です。水銀灯の消費電力が400Wとすると、同程度の照度を確保するためのLEDの消費電力は100W程度であり、75%の省エネになるという試算が出ていました。年間一日も休まず、14時間ほど点灯されていた為大きな省エネ効果が期待できていました。

投資回収年数が早かった

投資にお金を出す物件オーナー側が投資回収年数を検討して前向きになるのは、私の経験的に3年が一つの目安となります。この水銀灯のLED化という省エネ投資では2年で投資回収できるという試算ができており、投資回収年数的には申し分ありませんでした。

しかし、一見バラ色の投資に見えたこの省エネ案は結局のところは、頓挫してしまいました。一体どうしてでしょうか。

計画が頓挫した理由

物件運営会社が難色を示した

物件運営会社がある事実に気付いたときに、一気にこの話は勢いをなくしていきました。その事実とは「テナント専有部の照明を省エネ化すると、売電による売り上げが下がってしまう」というものでした。

どういうことかというと、まず物件運営会社は電力会社から買った(仕入れた)電気を、テナントに販売して差益を享受しています。その差益の割合は10%から20%程度だとお考えください。

物件運営会社からすると、テナント専有部の電気に関しては省エネを考えるよりもどうぞ使ってくださいというようなものです。使ってもらえば貰うほど、利益が発生するからです。

一方で、LEDで75%省エネ化するということは、その照明に関する売電売上と利益を同程度下げるのと同じことです。

物件運営会社の現地スタッフ達も本社から予算をという名の目標を持たされていますから、省エネ投資をしたから利益が下がったという減益に関する大義名分があったとしても、予算が達成できなくなる、右肩上がりの成長曲線を描けなくなるということは彼らにとって彼らの上司から怒られるという非常にプレッシャーのかかることですから、その時を境にして、ひとまずテナント専有部の省エネは後回しにしよう、共用部の省エネをまずやってくれという方針となりました。

ビルメン会社の上司が難色を示した

ビルメン会社はテナントの専有部の水銀灯切れの連絡を受けた際に、代わりの水銀灯を持参してその場でテナントに販売しています。購入してもらった水銀灯をその場で取り付けて、つかなくなった古い水銀灯を回収するという労務をサービスとしています。

何が問題になったかというと水銀灯からLEDに代わると、球切れが40,000時間は発生しないことになります。現場ビルメンからしたら作業が減ることになるので歓迎すべきことなのですが、ビルメン会社の本部からしたら売り上げと利益の機会が奪われることになるので、ちょっと待ってくれとストップがかかったわけです。

困ったことに、照明器具の販売というのはビルメンテナンス会社にとって結構利益を確保できる、優秀な売り上げ項目なんです。

ですから、運営会社からも自分の所属する会社からも賛成を得られなくて、当初考えていたエリアの水銀灯のLED化はできませんでした。一方で共用部のLED化は比較的スムーズに実施することができました。

省エネ法の目標数値である毎年1%のエネルギー使用量の逓減については照明の点灯スケジュール改善を実施すること達成することができ、その年のノルマはクリアすることができました。

エネルギー管理士選任一年目で学んだことは、省エネをすすめることが、誰にとっても両手離しで歓迎できることではないということでした。今後省エネを進めていく上でいい勉強になりました。

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